11月〜2月、透明な綾
- ai kawase
- 3月3日
- 読了時間: 9分
更新日:8月6日
すっかり日が経って、前回更新してから季節がふたつほど巡ろうとしています。
2024年11月から、今年2025年2月にいたるまで、今日はふりかえってみます。
11月14日には、いつもお世話になっているイベント「FOuR DANCERS vol.303」にて
ここ2回ほど連続して取り組んでいる即興をしました。
即興(景色が揺れる。しずめる。ラベンダーが飲み込んだ水のあとさきとその日の体と場)
作品ページはこちらから
アントニオ・カルロス・ジョビン「三月の水」英語詩の菊地成孔さんによる翻訳詩を自ら朗読した音源とともに。
地道に創作を続けてこられているのは、この場があるからだな...と。
すっかりホームのようなイベントです。
帰る場所ってとても大切で、信じて身を預けられもするし、いつも丁寧に繋がっておかなきゃというか、気の抜けないところでもあったりして。
この場をもたせてくださる皆様も、この場でご覧いただけている皆様へも、お礼申し上げます。
その二日後には
ウミ下着のバンド編成版、Umishitagiのみんなで閏年のイベントを。
京都市内某所で野外ストリートライブをお客さんに呼びかけて行ったのでした。
この日にいたるまで、大阪や京都で、たびたび集まっては野外ライブをしてきていて。
自分たちでカメラを持ち替えながら踊りつつ撮影した動画が結構面白かったり。
こういう場を呼びかけてくれたからまた集まれた、Umishitagiの中西さんに感謝。
ここの数日がかなり充実しており、
FOuR DANCERSと野外ストリートライブの間の日には、小学校でのワークショップ初日があり、そちらへアシスタントに出かけさせていただいていました。
「見ないダンス」でご一緒させてもらって以来、見えない人・見える人・見えにくい人で集まって行われている動きをめぐる研究会にもぽつぽつ参加させていただいたり、ダンスを見に来てくださったりと縁が続いている伴戸さん、
この機会ではじめてご一緒させていただいた素敵な声の豊島さんのお二人が先導され、
大阪で一度お世話になっていた古谷さんや財団の皆様も一緒になって進めてくださったワークショップ。
自分なりに関わっていきたい!という気持ちをひしひしと受け取って、特大ボリュームのエネルギーで参加してくれた小学校一年生のみなさんがとてもまぶしかった!
大変お世話になりました。
どこをとっても素敵な現場で、「またこんな場所に帰って来たいな(がんばろう)」という思いを持たせてもらいました。
またどこかで。
秋はあっとゆうまに冬になり、
お誘いいただいて知り、とびこんだのはロームシアターで行われていた、
ドレスデン・フランクフルト・ダンスカンパニーによる5日間の集中ワークショップ。
さまざまに影響をうけて。
身体的・踊り的には、もうちょっと長く、あるいは、また近いうちに再び、
ヤニスさんのメソトロジーを学び踊る時間を持たせてもらいたい!と思ったのでした。
ご一緒にワークショップを受けたダンサーのみなさんともまたどこかで会えますように。
わたしも頑張っていこう。

このすべての時間を通底して流れていたことは、
2019年ぶりの自主企画公演、川瀬亜衣 ソロダンス『透明な綾』の準備や創作でした。
2025年2月2日〜3日に京都初演。
おかげさまで、無事全公演を終演いたしました。
お気にかけてくださった方々、公私ともにご協力くださった方々、
ともに公演をつくった座組のみなさま、そして、公演にお越しくださったお客様、
誠にありがとうございました。
公演を終えてもあれこれとやるべきこと/やっておきたいことがあって、
ひとつひとつ進めています。
これまでを振り返ったり、これからを展望したり。
大事な時間をすごしています。
このタイミングで見に行った
国立京都近代美術館の展覧会「黒田辰秋ー木と漆と螺鈿の旅」では、
自分の思う完成を手がけることや、素材の自然の中に見出していく個性であったり、
公演をひとつおえた自分によく響いて、そっと激励されつつ背中を押してもらったような心地に。
いまはまだ言葉少なに振り返ります。
2日間で5回のソロダンスを踊り終えて、その後も思うことは、
自分のダンス観や身体観が、それこそ、
揺れて解れて角を曲がろうとしてるかもしれないってことや、
まだ知らない文化圏へ身を運び、知り、感覚して、その日その場にある体ごと
踊っていきたいということ。
38歳、10年近く続けてきた生活の環境も、
この4月からちょっとずつ変わっていけたらと思っていて、
これからチャレンジできること、積極的に働きかけていこうとしています。
この記事をアップしてから早数ヶ月、
「川瀬亜衣 ソロダンス『透明な綾』観劇録二〇二五」を作成しました。
ご希望の方へお渡しする形での無料配布をしています。
自宅で手を動かして、自家製本しております。
内容は、上念省三さんに執筆いただいた「透明な綾 二十五首」、写真と短いテキストによる創作の軌跡、奥田ケンさんにご協力いただいた記録映像のリンクなど。
本番時には、詩集収録詩だけでなく、当日朝に新たに思い起こした詩を口にしていましたが、そちらの本番詩をあらためてテキストに書き出したものも収録しています。
ぜひ、お手に取っていただけると幸いです。
ご希望の方は、公演WEBの観劇録お問い合わせフォームから、または、私個人へ直接ご連絡ください。
川瀬亜衣 ソロダンス『透明な綾』
2025.2.2 sun - 2.3 mon at Space bubu
2025.2.3 mon 19:00開演の回 記録映像はこちら。
2日間で5回。
1回60分。
ほとんどは朝か昼に踊り、
最後は夜に踊りました。
会場となる町屋へは、
靴を脱いでお上がりいただいて。
ソロダンスのモチーフとなる自著「詩集 透明な綾」を作ることに決めてからは5年ほど。
に寄せて制作していただいた、鈴木彩加さんの作品『いつでもそばに』『記憶のコラージュ』をお呼びして、
かつて日本舞踊の稽古場だったという板間に増設された鏡面に掛けさせてもらう。
外光の色がそのまま室内に流れ込むように、掃き出し窓のカーテンは取り払う。
誰かの住処となるべく解放された入居前の部屋のようにも見える。
ソロダンスは二つ上演していて、
一つ目は大谷悠さんの振付・演出にて板間で踊るsolo_b、
二つ目solo_aは、私自身が用意した作で板間と和室を行き来して踊りました。
solo_bの作品創作は、しっかりと未踏の領域に潜り込んで、ダイナミックな創作時間を過ごさせてもらいました。
大谷悠さんにとっても野心的な時間だったと思うし、荒野に出たような時間もあったと思うけれど。
創作の始まる直前に話し合ったときに、ご自身からやっぱり創作することを選んでくださり、最後まで並走してくれたことに感謝しています。
いつか、年月を経て、またことなるバックグラウンドのダンサーがこの作品を踊るとどんなものが見えてくるだろう。ということに、今の私は関心があります。
室内を走る姿、たくさんの人に感想をもらって、みんなそこを見るんだって思いました。
solo_aは、作中で行ういくつかの〝仕事〟ーーものとの仕事、からだの仕事、言葉の仕事ーーを用意して、それらをゆるやかに進行しながら、観察と反応、受信と発信、手触りをひとつずつ確かめるようにして、即興で踊り語り、日常と非日常の行き来をお客さんと一緒にすごすというもの。
創作過程は、今回の公演にいたるまでに度々素描的に創作してきたことを振り返りながら、少しずつ少しずつ進んでいくことになりました。
solo_aの稽古場にて、度々並走してもらったダンサーの中根千枝さん、年明け後の稽古に訪れていただいた上念省三さん、オープンなようでナイーブな稽古場が緩やかにあたたかになったのは、お二人の存在が大きかったように思います。
中根千枝さんには、からだの仕事にあたる身体性や即興のための方法をシェアするとかして、彼女に代わりに踊ってもらうということも可能性としてはあったけど、
稽古ごとにしっくりくることをやっていたら、中根千枝さんには、ずっと見守ってもらうということになっていました。
何が見えたか・何を思ったか・何が起きそうか?いうことを、創作サイドの際に立って、言葉にして渡してもらったり、稽古のために訪れた夙川を歩き話すことをしました。
solo_a の構想は、稽古場に入るより随分前からあって、
自分の赴くことが叶うあらゆる土地を訪れて、その場所の景色や生活や、その時出会ったものも、かつてあったものも触れるし、これからあるかもしれないものへも思い触れるようにして、作中で行ういくつかの"仕事" を作り踊るということを重ね、まさに透明な綾を織りなすということ。
ドラマトゥルクでもなく、アシスタントでもなく、"稽古場の協力者"として来てもらっていて、
まず、この名前のない仕事を快く引き受けてくれたことに感謝しかないし、
作品の創作背景も踏まえて中根千枝さんが夙川に呼んでくれたんだと思うと、仕合せな稽古場だったんだな、と。
空白のキャンバスボードに置かれた空っぽのマグカップ。
その対面に置かれたもう一つの空のマグカップ。
湯が注がれ密閉された魔法瓶のタンブラー。
あらかじめ途切れる約束の紙テープ。
時間がきたら鳴る炊飯の生活音。
会場の京都・紫野にある船岡山、稽古場の夙川や香櫨園からのぞむかぶと山の話。
行けなかった香櫨園浜の海、2017年に船上から眼差していた神戸の海の話。
2017年の詩、昨日と今朝の詩。
踊るあいだ、
美術作品はずっとそこにあり、
踊る人や空気の揺れにあわせて、藍染のシルクオーガンジーがふわりふわりと揺れている。
そこにあってくれたことの仕事の大きさが、お客さんからの言葉でさらに。味わい深まりました。
藍染がいいんじゃないか?
と、いうところから始まって、
しかも藍の葉は種から育てましょう
と、提案してもらい、本当に嬉しかったのを覚えています。
鈴木彩加さんの作品は、
ゆらぎによって時に美しく、身を寄せるとまり木はあるけど固着しない自然さがあり、
完成した作品を茨木の家屋や公園の緑地のなかでさまざまに見つめる時間は、
とても豊かなものでした。
公演当日、お客さんと一緒に美術作品を眺めることができて、とても嬉しかったです。
お越しいただいたみなさま、ありがとうございます。
お気にかけてくださった方々、公演にご協力いただいた方、座組のみなさま、大変お世話になりました。
「透明な綾」は、これからもまた違う場所で上演をしていきたいと思っています。
はやくも、2025年秋にその機会を設けさせてもらえることになりました。
情報公開までもう少し。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
(2025年 8月6日 追記)
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