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6・7月





前回の投稿の後、FOuR DANCERS vol.254 への出演が決まり、

受かると思っていなかった仕事関係の試験日がその2日前にどどーんとか構えている、そんなスケジュールになっていた。

短距離走ではない創作って、前の記事で書いて締めていたが、

どうもそうやすやすとはうまくいかないのかな・・・と思っていた。

しかし、やってみて思うことは、短距離走をつないでいくことができたら、それって充実した長距離走だと言うことだった。



今回の上演では、

私の文筆プロジェクトでありの文筆時の名義「背中す春」による詩を、『詩集 透明な綾』より全編引用し、詩集として編み合わせた流れのまま順番に詩を朗読してもらいながら、私は終始身体を動かして踊ることを続けた。


『詩集 透明な綾』の収録詩のほぼ全ては、父の病気がわかった頃から看取る時を経て、その後に続くながい別れの時間から、トンネルを抜け出たようなところに至るまでを、綴ったものだ。 今回の作品で初めて、自分の声ではなく、他者の声、朗読を介在させた、詩とダンスの関連性の中にいる中で、私は詩に対して、どのように応答したいのか、どのように応答することが私にとっての真実なのか、そういったことを逃さないための方法が踊り続けることだったのかもしれない。



前々からやっていきたいと思っていた他者の介入を招き入れること。

このタイミングでそれをやれるな、と思えたのは、やはり他者の存在だった。



6月半ば頃、前回の出演時の反省点であった、声を出した途端に会場全体のサイズ感やお客さんへの感覚が霞のようになってしまい、まるで踊る時の身体と違ってしまって、ずっと自分のパフォーマンスが自分の中でフィードバックできなかった...ということを、ダンサーの増田美佳さんに相談していた。

すると、美佳さんは一緒に稽古に付き合ってくれ、その時に、他者の声で自作の詩を聞きながら踊ると、詩の印象や語句の一つひとつがその色合いが変わって感じられることに気づいたのだった。


自分の声で自作の詩を読み、それを耳にしながら踊った時は、詩として言葉に現出させる以前の情景や風景のようなものが先行して立ち上がってきて、どうもすんなりとは動きが生まれ出てこなかった。

立ち止まるような心、それを詩にしていたからかとは思うけれど。


書きためた詩を今冬には『詩集 透明な綾』として紙にする。

いつかそれを展示や公演といった形で空間に返していきたいとも企てている。

これをしようと決めたのも、自分のうちにある言葉が、誰かの言葉になれたならという思いがあってのことだった。

少しずつ他者が介在する中で詩のありようも変わってきている。

実際に、詩の軸や大きな形は変わらないけれど、人に読んでもらったり、踊ったりする中で、少しずつその語句の端々は変容した。 今冬、詩集を紙にして発行してまた何かありようは変わるだろうし、いつか(来年度かな)、詩集を展示したり上演するなど空間に返す企てを進めていくうちに、また少しずつ詩の存在が外に開かれて、私じゃない誰かの言葉にもなることができたなら、と思う。

まず私自身が、自分の言葉や、詩として書き表したあの情景や風景を、他者の介在によって、出会い直したいと思っているし、同様に、どこかの誰かもそのようにして、私の言葉を使ってご自身の心の横顔と再会するようなことがあるかもしれない。

自分の内側でそれらをやりくりしていくよりも、外の何かによってそれが展開されゆく中で、いつかそれぞれの生きている世界への信頼につながると思う。




FOuR DANCERS vol.254、本番は7月3日。


文芸活動とダンスの仲間でもある古川友紀さんに、朗読をしてもらえないか?と依頼したのは、6月も後半に差し掛かった頃だった。


彼女とは、付かず離れず共同してきた。

カゲヤマ気象台氏による戯曲『シティⅠ』を、京都芸術センター主催事業「KAC Performing Arts : contemporary dance」において、上演する際には、ゆざわさなさんから声をかけてもらい、この演劇作品をダンスとして上演するための振付を依頼され取り組んだ。ここで、古川さんに初めて声をかけて、出演していただいたのだった。

そこから、大坪晶さんによるプロジェクト「shadow in the house」でも、大阪・鳥取と、ともにパフォーマンスを行うなど、度々ともに活動している。


とはいえ、久しぶりの創作でもあり、そんな中、集中して4日間のクリエイションで、今回の上演にこぎつけた。


タイトルを『詩とダンス|透明な綾』とした。



上演を終えて思うことは、たくさんある。

記録映像を見ていると、これもまた他者の視点によって撮影されたものなので、客観的に見つめることができ、さまざまにリクリエイションしたい気持ちが良し悪し問わずに溢れた。実際、荒い部分もたくさんあった。

自分のことで言うと、ダンスはここ最近の低迷期を少し脱したのかな?という気配もあって良かったけど、「詩とダンス」の関連性に目を向けると、もっとやりたいことがあったと思う。

ただ、ただ、稽古を重ねることで醸造されるものもあるだろう。

確かに今回は通過儀礼のように、自分で詩集を全編踊ることが必要だったし、やって良かったと思う。

言えることは、ここで終わりでは到底ありえないと言うことだ。


先に書いたように、「自分のうちにある言葉が、誰かの言葉になれたなら」と言うには、

今回の上演では、収穫したものをそのまま提示したような感じもして、見る人に委ねる部分がちょっと大きかったように思う。

それが良い場合ももちろんあって、いつでもその鑑賞は見る人のものだけれど、作り手としては、まだまだやり込む必要がある。


それでもこの日、

久しぶりに見てもらえた友人、初めて直接作品についてのお話をお聞かせくださった方、旧知の仲ながらほぼ初めて見てくださった方、私の文芸方面の活動が紐づいて来てくださったほぼ初対面の方にも感想の言葉をいただけて、

とてもありがたかった。

もらった言葉が自分の燃料になっていくのがわかった。



稽古日数4日間というタイトなスケジュールの中、本作に朗読として出演し創作時には声や朗読者の存在について考える機会をくださった古川友紀さんを初め、稽古初期に一緒に身体を動かして付き合ってくれた増田美佳さん、UrBANGUILDのブッキングマネージャーかつ照明オペレーションかつ音響オペレーションをしてくださったryotaroさん、お店のスタッフの皆さん、美術の実験に付き合ってくれた夫、記録撮影に入ってくださったり同日に共演させていただいたダンス仲間の皆さん、大変ありがとうございました。


リクリエイションして、いつか、この作品を主体にお見せできる場を企てていきたいと思います。




『詩とダンス|透明な綾』(上演時間:33min)

出演 川瀬亜衣(ダンス) 古川友紀(朗読)

構成・演出 川瀬亜衣

作中で朗読される詩 背中す春/川瀬亜衣『詩集 透明な綾』

日時 2023年7月4日(火)

場所 UrBANGUILD


作品記録ページはまた後日、更新予定。→ こちらです




冒頭の写真: 今回の稽古期間の終わりに見えたピカピカの満月。うまく像をつかまえられず、ぼやけている。


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