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7月、8月


できるだけ深い話には口をつぐんで、山登り。

ダンスの先輩、帰山さんに連れってもらった比叡山登山は初めてのルート。

濃霧の日で、挙句雨も本降りとなり、山頂前で折り返したが、霧の中の比叡山は素晴らしく幽幻だった。

秋山にはこの日一緒に登ろうと話した3名揃って登りたい。



7月は、すっかり元の生活に戻ろうとする世間の流れの中で、自分の生活をもう一度組み立てたくなっていた。ダンス仲間や先輩たちに相談にも乗ってもらって、本当にありがたい。久しぶりに不安や悩み、どうしようもないねって話を、安心して話す。夏バテのせいにしてすっかり食べる気を失っていたけれど、美味しい食事って素晴らしい。お腹が空かなくっても、美味しい食事は口に運びたくなる。口の中でただ味わえることが、こんな大切だとは。分かってたつもりで、もう一度しみじみと身に沁みて思う。


こう書いていると、まるで元気がなかったみたいなんだけど、、

どちらかと言うとどんどん元気になっている。


8月30日、ありがたいことに再び、FOuR DANCERSにてソロを踊らせていただけた。

共演の野乃子さん・和田さん・みすずさんのソロもとても、美しかった。

鍛錬されたものは、身体も作品も、凛としていて。

作品を作らなきゃやってらんない、いくら鍛錬しても追いつかない、それだけの思いで一身に稽古場の時間が満ちていく感覚を、なんだかここのところのワヤで忘れそうになってたと気づく。 毎度、このような機会と場をいただけるUrBANGUILDには感謝しきれない。 最近は私もなかなか集客ができないのだけど、単純に、こんな状況だからこそ、体調に不安がない方はどうぞみにきて欲しい。たった一つのこと、表現している人を見つめることだけで良い時間は、豊かだし、見終えたら美味しいご飯もお酒もある。(コーヒー好きには、美味しいコーヒーもあることをお伝えしたい ※少し訂正入れました、バーカウンター上の黒板にコーヒーの紹介されてます。ぜひ現地で見てみてください〜)

一方、私はと言うと・・・

作品をガッチリ振付して作っていく気でいたのだけど、稽古場に入ってみると、少しずつ正気を取り戻した身体がどんどん動くのが久しぶりで新鮮。即興で踊り進める作品にした。近年どうもたびたび思い出される物語や説話の力も借りることにした。


・・・


初めてダンサーとして話をもらって出演した故・黒沢美香さんによる「ジャズズ・ダンス」(これが2014年の上演だった。なので、踊り始めて10年目だけど、ダンサーみたいに踊るようになったのはこれ以降なので、そこから勘定したらまだ6年ほど)のリハ中に個人的に見つけた歩行も、今回の作品を踊るためのベーシックな身体感覚として連れてきた。進もうと前傾しながら、背面になごる<今・過去>が後退を誘うようにして、前後に揺れる。意識ばかりが前後に揺れ、身体は後からおいすがる。どうしようもなく滞留する作用(エネルギー)を頭上に抜かしてブレ上がってみる。宙体ってこう言うののことなのかしら?わからないながら、私なりのリアリティでなんとか歩く、そう言う歩行。 参考したお話からは、「山月記」の虎となった男の遠吠えと茂みに姿を消して息を潜める姿、「胡蝶の夢」の中の蝶と人間、「Kの昇天」からは手紙のクライマックス、K君がついに影と肉体の別離をして月と海底に別れゆくあの1シーン。タイトルは「City Scape/虎/蝶/海辺の月」とした。毎度のこと、タイトルは誰にも公開してないけど。。




今回の即興は、昨年12月に、自分の企画するプロジェクト「ダンサーを記録する」ショーイングで実演した小作品からも引用。会場にあるもの、会場から見えるもの、会場の外に広がるものを、そこに突っ立ったまま身体の皮膚感覚で訪ね、その中で生まれる動線/導線にドライブして踊っていくような即興。

12月と少し違う点は、架空の「この踊りを見つめる人」を、どこにいてもらうかを変容させていくこと。ある時はビルの天井を突き抜けて空の上から、ある時は自分のお腹の中から(ミソは"内観"ではないと言うこと)、エレベーターホールのあたりから見つめているとする。私の踊りを見つめているのではなく、この会場のことを見つめている存在として意識して踊ると、体感が面白いほど変わる。もし私と基礎稽古を共にしようと言う方がいらっしゃったら、ぜひご一緒にやってみたいのです。面白いから。本当に。面白さどんだけ伝えられるかは未知数だけど、どうかぜひ。


・・・

「都市」についてを濃ゆく思ったのは、学生時代に登った森ビルの展望台だった。

無数の室内灯がビルの四角い窓に切り取られてずうっと地べたを宙に浮いて広がる街。

その中にいる人々。人々の上澄を飛んでいる赤いランプの層。どことなく空虚で切ない花畑のような、燃える蝋燭の集まりのような。

展望台からは広く眺めることができるが、全て何かが隔たっていてその向こう側にいる人、営みは、こちらには届かない。是枝監督の「誰も知らない」という映画があるが、家の中と言うのは町にいくつもあるけど内部は別世界かもしれなくて、誰にもわからない。わからないものと隣り合いながら生活してく都市。


空想も交えながら隔たりの向こうを身体で訪ねて、その連続が動きになる即興を、稽古場で何度かチャレンジした。訪ねてラインが生まれてそれが重層化したら、今度は「書き出す」のではなく「書き込む」ように、空中に想定されるラインを身体で受動して動かされるところまで行った。久しぶりに意識も身体もドライブするような即興ができた日もあった。

稽古は1日3時間、基礎トレーニングと調整と、クリエーションの下ごしらえをしたら、1日1回30分の1本通し。できるだけ固めないように。稽古で見つけたいろんなルートはまたいつでも引き出してこれるように。

即興で踊るための下ごしらえ方も、少しずつ自分なりに攻め方と回避しかたを嗅ぎ分けられるような感じになってきた。

・・・

いざ本番。

すると、どうも皮膚が甲羅みたいに硬くなって感じられ、受動できない。

早々に非常食(稽古場で念のため備蓄しておいた即興の手立て)に手をつけたのが悔しい。

みてくださった先輩方、素敵な共演者の方々、お店のスタッフの方から、好感触な感想をいただけて、そっと肩を撫で下ろしながら、いやはやまだまだ自省も疑わず精進すべし。

路上で踊るのは怖くてやってこなかったけど、

いよいよそう言うチャレンジも逃れずやったほうがいいかもしれない。

いつでも受けられる身体で立てるように。


この日の作品は、もう一度やりたい。何度か実験的にも細かくやってみて、フィードバックさせて、

再創作と再演のギリギリのあたりでもう一度。遠すぎない時期に。

人とも一期一会だけど、作品との関係も一期一会やなと思いつつ。


この日の様子は、映像を撮影してくださっているので、また後日、ここにも少しアップさせていただくかもしれないです。

もし、この徒然としたブログを読んでくださってる方がいらっしゃったら、

気の向いた時にご覧くださいね。そして、実際に足を運んでいただけると幸いです。


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そうそう、この日はお店の方のお誕生日サプライズもあって。

誕生日を祝うって、幾つになってもいいもんだなぁ~。おめでとうございます。

いろいろありますけど、こう言うこと大事に祝うってことに、内心ほくほくした。


2020.8.30 FOuR DANCERS vol.173 UrBANGUILD

自作自演ソロ「City Scape/虎/蝶/海辺の月」

参考:中島敦「山月記」、荘子「胡蝶の夢」、梶井基次郎「Kの昇天」

お世話になった音楽:Bill Evans「枯葉」「peace piece」




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