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 a dance, trace of written letters 

 書き文字を辿り踊る 

 2023.7.4
 詩とダンス|透明な綾 poem with dance|Airy twill 

 2017年から、別名義「背中す春」として書いてきた詩を詩集として綴じるとともに、詩集を題材に川瀬亜衣としてもソロダンスを創作していく−−−今回は初めて「朗読者」を迎え、収録詩の全編上演を試みた。

 詩の背景を知っている作者自身が朗読するのと、その背景を完全には知り得ない他者が朗読するのとでは、読まれる言葉から想起される詩の風景が少し異なって感じられる。他者の視点を「声」あるいは「朗読」という形で取り入れて行った詩の朗読とダンスのセッションから演出案・構成案を出し、稽古場で手入れしつつ朗読者からの感想を多分に取り入れて創作を行った。構成・演出の意図や目的を達成できるかをパフォーマンスの第一要件に問わず、上演時の自分たちに起きたことや、それらの重なりによって生まれる流れを最も重視してパフォーマンスを行った。ダンスに関しては、基本的には即興で繰り出した。このように、本作における言葉は文字ではなく声として存在しており、過去作のように書き文字をダイレクトに辿るような動きは取り入れていない。

 上演を終えて、手の入れようが多分に残る演出・構成であり、正直に申し上げると、当日は稽古不足が目立つパフォーマンスであったため、プロダクションとして課題が残った。一方で、「一本取り出して公演をしては?」といった声をいただき、詩集完成後には、何かしらの形でリクリエイションして本公演まで連れていきたいと思っている。詩集は今冬の発行を予定している。

日程 date 4th July. 2023

会場 venue UrBANGUILD(京都・木屋町)

出演 performance 川瀬亜衣 Ai Kawase/ダンス dance , 古川友紀 Yuki Furukawa/朗読 reading

構成・演出・音源制作 choreograph•staging•sound 川瀬亜衣 Ai Kawase

詩 poem 背中す春 Saynaka Suharu『詩集 透明な綾』poetry anthology|Airy twill

FOuR DANCERS vol.254

 

「詩作、詩集について」

 ダンサー・振付家として活動する川瀬亜衣による文筆プロジェクトとして、2017年〜2021年の間の私生活における心を、自己とは異なる架空の視点「背中す春」として描き出す詩作を行ってきた。『詩集 透明な綾』収録詩の多くは、大切な人との別れの時間の中に試作されたもので、また、その時間を携えながら明日を繰り返していく残された生活者の詩となっている。
 残された生活者は日々の中で別離した人を思い出し、思い出せば思い出すたびに、その記憶は少しずつ思い出すその人によって書き加えられていくものとも言える。手を繋いだ温もりや、その手の重さなど、皮膚感覚的な記憶からはどんどん身体性が失われていくように思える。それでも日々のそこかしこには別離した人との思い出のかけらが転がっていて、そこには、別離した人との縁を紡ぐような幾重にも織り重なった目には見えない“透明な綾”のようなものを見出せるかもしれない。残された生活者をかたどるあらゆる物事には、透明な綾が見え隠れするようになるーー別れの時間にあっては琴線に触れる瞬間が日常にはたくさんあって、そういったことをできるだけ感じたそのままに言葉として残せるよう、詩作と詩集制作に取り組んできた。
 なお、原稿に収録した詩(推敲前のもの)を含む詩作の多くはinstagramにて公開している。

 

「詩集発行、詩とダンスの接点を迎えるにあたって」

 詩集を通して私と同じように別れの時間を過ごす/思いはせる誰かの手元に渡ることがあればと望んでいる。
 そのために、私個人の中で保たれていた「背中す春」による詩作に対して、他者の存在を創作に迎え入れる試みを行ってきた。実際には、文筆仲間であるダンサーらの助言や感想をもらい、表紙美術をテキスタイルの美術作家に依頼し製作、収録詩を扱ったダンス作品を上演して観客の方々から感想の言葉をいただくなどを通して、詩の言葉の再解釈をし、2023年7月現在も収録詩の推敲および詩集原稿のリデザインを行っている。
 また、それと共に、詩集の展示や収録詩を扱う上演を行うことで、本業のダンス作品創作と詩作との接点を図り、ダンサー・振付家としての今後の活動に新たな展開を生む基点にもなるような機会としたいと考えている。

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記録映像より  

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