わたくしごと、豊島にて

September 3, 2016

 

 

6年越しの願いで、やっと豊島美術館に身を運んだ。

 

豊島へは大学卒業時の2010年にも行ったのだけど、そのとき豊島美術館は建設中で中へは入れなかった。

島のお店でしゃりしゃりのアイスを買って食べた。真夏のぎらぎらの陽射を今もすぐ思い出せる。

海を臨むボルタンスキーの心臓音のアーカイブも、島キッチンでのんびりする人の姿も。

 

当時は、維新派の<彼>と旅をする三部作の3作目を犬島へ観に行くのを目的に、豊島へも立ち寄った。

今回は、高松でのやなぎみわさんの公演「日輪の翼」も旅の大きな目的の一つである。

瀬戸内にいくのなら。豊島美術館にいくなら今、と決心。

 

観たいのならさっさと豊島美術館へ行けばいいのだけど(笑)

 

なんだか渋ってしまっていたのにはわけがあって、筆が進むのに任せてつらつら書き出してみたい。

 

 

 

 

 

大学卒業目前のころのこと。

就職活動で、新長田の町まで、合皮靴製造会社の面接を受けに行ったことがある。

 

 

その日、採用のご担当野方が会社に居れず、急遽しょっぱなから社長面接をしてもらうこととなった。

話しやすい雰囲気で迎えられ、あれこれ雑談のようにお話をしていくうちに、

「自分もやりたいと思ったことがあって、それをするために海外へも行った。あなたもやりたいことがあるなら、我慢せんといまやった方がいいよ。この履歴書どうする?持って帰る?」

というようなかんじで親身に話してくださった。面接じゃなくて進路相談に乗っていただいた感じだ。

その場で履歴書を返してもらい、そのまま解散!とあいなった。私は、ずっと作品がつくりたかった。

 

 

そのすぐ後に、西宮市の子供服のデザイン会社から内定メールを受信。悩んだあげく、就職することにしてしまった。家族の中で唯一、私だけ大学まで行かせてもらっていたので、卒業後は働かねばと力んでいた。

結局辞めてしまうのだけど..

 

この会社で、イラストレーターの使い方を学び盗り覚えた。なんでもやっておくもんだ、と今なら素直に思うのだけど、この時は、昼休憩中に本屋で手にした「美術手帖」がものすごいぴかぴか光ってみえて泣けるくらい、美術が恋しい時期だった。

 

細々と続けていた美術の制作は、自分なりの切り口を見つけ、いよいよ制作の欲求がピークにふれた。

まだ4月の終わり頃のこと。決めてはコレだけど、諸々のことが重なり、仕事を辞めようときめた。

試用期間の3ヶ月が経つ前に、社長に相談しなければ、と焦って退職の希望を伝えると、いつでもどうぞ。と、2ヶ月満了で辞職した。「気持ちはよくわかるけど、入社する前に気付いておくものだからね」と諭され、がんばれと応援されてしまった。

往生際がわるいのは、たまに周囲に打撃、いただけない。これは反省だった。

 

 

 

 

 

 

会社を辞めて、1ヶ月はじっくり次の展開を考えた。

 

日々、母校のギャラリーへ日参するようになっていた。

 

(ちょうどギャラリーでは、日本画の抽象画を舞台美術ととらえ日々異なるパフォーマンスが、展示室内で行われるという展覧会だった。「胡蝶の夢」という名前の展覧会だったと記憶している。そのときに、度々踊っていたダンサーが千日前青空ダンス倶楽部の新メンバー募集ちらしを持っていて、それを手にする所から、ダンスの方にぐいぃと流れ出す。このときのダンサーとは、いまもよく一緒に動き、共演者としても舞台に立つ。うれしい。)

 

 

 

泣いた顔を拭いたティッシュペーパーにトレースされる、顔面を水が這った痕跡。

 

カーテン越しに差し込む日光に光るシンクの水たまりが、徐々に小さくなっていくこと。

 

 

それらが、頭の中でうずまくものとリンクして、水滴でドローイングしはじめた。

 

 

 

身近な人の認知症のことや、時事的なこと、また、当時わかりやすく失恋を受け付けきれない女子と化していたことも相俟って、忘却(それに含まれる編集)について執心していた私は、水が蒸発していく光景に、忘却することや物事の終わりゆく時間の過ごし方と似たものを感じとっていた。水に憧れ、水で絵を描きたいと欲して、そのままそれをやった。

 

 

 

表面張力でころんとまるく留まるように、水滴を支持体に絵筆で置いていく。

水滴には、その外部にあるもののカゲが映る。

そこに、顔彩や、削って粉にしたパステル、塩、砂利などをふりかけて着彩して、絵を描いた。

たまに全て洗い流して、支持体に浸透した色まで削り落とす。

乾燥するのを待つ。

 

 

延々とその作業を重ね、変わっていく支持体の表面を数百枚と定点で撮影する。

そこからセレクトした写真数枚から成る、組写真のインスタレーション作品をつくった。

 

 

 

作品のハード面の内容は3つ。

 

絵と写真、それと、ドローイングしているときの、書道をしている時とよく似た感覚のする身体感覚。

 

 

 

 

出会う人にポートフォリオを観ていただき、いろいろ話を伺った。

 

そこで内藤礼さんのことをおしえてもらい、「かならず観た方がいい」と言われた。

調べるとすぐ、豊島美術館の作品、母型のイメージが検索できた。水滴である。

しかもどうやらとても大きな1つの部屋全体に行き渡っている。観たい。

 

 

 

けれど、この作品、観たあと私は何が作れるんだろうか。

 

目指してるものと類似しすぎていたら、想い描いているイメージがそのままそこにあったとしたら。

 

いや、それが観られるのはとっても幸福なんだけど、自分で作品作れなくなったらどうしよう。

 

...と、恐れてなかなか出向かなかった。

 

 

そういうわけで、豊島美術館までの道のりが6年もかかってしまった。。

 

 

 

・・・

 

 

 

6年越しの願いで、やっと豊島美術館に身を運んで、身体ごと出会った作品は、

作品写真から想像していたものとは全然ちがっていた。

 

 

 

もっとはやく来れば良かった!

 

 

 

もっともっと分からないものと出会うのかと想像していたけれど、母型には、

とても丁寧に設計された、自然が形づくる彫刻が、幾重にも存在させてあった。

 

 

 

母型は、彫刻だと思った。私の作品の水滴は、あくまで絵画だったんだと思った。

 

 

 

水にまつわるものを美しく思う精神は共通するかもしれないが、

母型は理性的で自然主体であり彫刻的、私の方はゆらぎが内包されて人間主体であり絵画的という、

おおきな違いがあるように思われた。

 

知人らにはきっと、作品に水滴を使っていることや、自然に対する精神の近似性から、また決定的に大きくちがう質も見越して、内藤礼さんの作品、とりわけ母型をみるよう促されたのだろうと思う。

 

 

 

 

 

絵画的。ゆらぎ。個別の人間主体。

 

 

美術の作品制作時も、いまダンスの舞台作品を作っていても、この3つは通底してあるようだと、他人事のように発見した。

 

 

 

大発見だー!と、静かな母型の室内で密かに熱くなる。

誰の邪魔もしないように、こっそり踊って、母型をあとにした。

 

 

(美術の作品空間の中で踊る。いつか、ダンサーとして正式に踊らせてもらえる機会をみつけたい。)

 

 

 

最初の振付作品「際の踊り」は、

水滴のドローイングから作った組写真/インスタレーション作品「a lying flow,state」を下地に、

コンセプトと踊りを立てたもの。

今回の「閃光に抱く」は、

前作のコンセプトを引継ぎつつ、2011年に一度だけ行ったパフォーマンス/インスタレーション「情報の保存」を、

作中に組み込んである。

 

まだまだここからだけど、振付が作られていく中で、徐々に作品の輪郭や性質がうかびあがってきた。

20日後に本番がやってきます。

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

旅の道中、行きのJRは姫路ー岡山間で乗り合わせた、全国津々浦々歩いてる女性たちご一行と仲良くなった。10人くらいいて、60代から80代までいる。

子どもが手を離れてから自分たちの楽しみで、各地を回っているという。ほんとにみなさんお元気。青春18きっぷの有効活用法について、30分くらい話す。話題はいくらでも出て来る。

 

「あなたも一緒にいく!?」と誘ってもらって、すごくうれしかった。

行き先を決めていない旅だったなら、確実に同行していた!

旅のしめに観た公演「日輪の翼」の話しに出て来るオバたちに、一足先に出会ったような心地。(大阪公演は、いま開催中。9/4まで北加賀屋のOCCにて。)

 

別れ際に、コーヒー飴6つ。さみしくなったらコレ食べてね、やって。

 

 

 

 

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